Published: 2025年9月4日
デキの悪い管理職には口癖がある。
「素直なやつが欲しい」
「大事なのは素直さ」
自分の意を奉じて真っ直ぐに使役される奴隷が欲しいと言うのである。部下は自分に逆らわない下僕であるべきだ、と言う。それはその通りなのだが、余りにも貧し過ぎる人間観であると言えぬだろうか。
確かに資本家と労働者はお互いの持たないものを補い合う(資本と労働力)という意味で、利害は一致する。
しかし資本家が労働者を激しく酷使すれば、資本家は利益を得て労働者は損失を被るし、逆も然りであって、労働者がサボタージュ・ストライキの態勢を示せば資本家は日干しにされてしまう。結局のところ、資本家と労働者の利害は相反するのである。
管理職とは資本家の走狗である。資本家の側である。
管理職と部下は本質的に利害相反の関係だ。
ぼんやりと無邪気に
「素直に言う事聞くやつが欲しいわ」
とデカイ声で言える理由は、人と人との利害関係に疎い神経から由来するのである。
下手をすると、自分が会社員として飼い犬やってる動機すら、分かっていない可能性がある。考える習慣が無いのだ。
愚鈍である。
知性のある管理職は悟っている。
管理職と部下は利害が相反するのだ、という事を。そんなの基本中の基本だ。
んで、そこから考え始める。
部下の首根っこを捕まえて「俺の出世のためにサービス残業しろ!」とは言える訳がない、と。ならば、ストーリーを作らなければならない。嘘じゃない範囲で方便を並べて、部下を騙さないといけない、鼓舞しないといけない。
「俺が上に行ったら必ずお前らを引っ張ってやるからな!だから一緒に頑張ろうぜ!」
とかね。
でもそれが通用したのは少し前の時代の話なんだな。昨今、企業はどんどん短命になってきている。終身雇用と年功序列に支えられた物語は、今や部下も信じない。よほど間抜けで純朴な奴ならこのご時世でもころっと上司に丸め込まれるけどね。
更にもう一段馬鹿な人間になると、
「俺の出世のために働けー!」
と言われても、恐怖に怯えて働く。そもそも俺と会社は利害関係で繋がっていて云々、と、考えを巡らせられる頭がなく、ただただ目の前の欲と恐怖に駆動されて、上司にムチ打たれて働くだけ。
デキの悪い管理職が欲しいのは、そう言う更に馬鹿な部下なのだ。それはきっと自分自身の投影なのであろう。