Published: 2025年8月27日
紙にペンで書かない人の思考の深さは、筆算せずに暗算しかしない人のそれと同じで、大したことはイメージできない。
「無理」
「できない」
息を吸って吐くと、こう言う言葉が出てくる。
そして、
「結婚したい」
「仕事やめたい」
「ディズニー行きたい」
「パソコン欲しい」
動物並みの短絡さでこんな言葉が口から漏れ出る。
努力、時間、手間、何かを代償に差し出す覚悟も計画もなく、その瞬間の感情がうわごとのように口をついて出てきて、しかもすぐに次のうわごとへと転々と流れてゆく。
自分が真に欲しい物を、自分が書いたメモを見てひしと思い返すのではなく、つまらないガラクタへの物欲をなんとなく流れるTVのCMによって思い出さしめられて、企業に意のままに操られて行動を支配されるのである。
まあそれはそれとして。
多くの行動ができない人たちにとって「無理」「できない」が口癖なのは、一桁か二桁の演算能力でしか自分をイメージしていないことに依る。自らの能力の限界を低く低く見積もっているのだ。
チャンスが来ても(それはしばしば試練の形でやってくるが)
「無理!」
と即断即決してこれを流す。脊椎反射でチャンスの窓を遮断するのだ。
複雑な計算問題(これは『高き人生の目標』の喩え)が出されて、パッと見て、暗算じゃ到底解けないと直感するやいなや、さっさと拒絶反応して思考停止するのである。
紙にペンで書き書きしながらのんびり考える習慣がある人は、喩えば2000桁の足し算とか、暗算じゃ無理だがその気になれば解けないことはない事を知っているので、
「ちょっと持ち帰って考えます」
と言って保留する。ゆっくり考えて結論を出す。紙とペンでカキカキしながら考えるのだ。
不才覚人はその矮小な一次メモリで全部を把握しようとする。チャレンジの全体像を描き、どこから手を付けるか、難所はどこか、計画を立てると工程はこうなるだろう、自分の労力は負担はいかほどで、それに対する報酬はこのくらいかな、と、諸々のイメージが一次メモリの容量を超えると、はやばやと思考回路はショート寸前になって投げ出す。
漫画などで頭が弱いキャラが頭から湯気を出しているあれだ。また、そう言うキャラクターがさっさとパンクする様子が美徳として描かれていることも、注意しなければならない。
つまりは人間の持ってる一次記憶メモリがいかに矮小なものなのか、と言う事だ。
だが、メモリの劣悪さを脇に置くと、人の脳のCPUの性能は意外なほど高い。これらの長短をよく吟味し、短所を克服すると同時に長所を伸ばす工夫が必要である。言うまでもなく、筆算だ。
紙とペンを使ってゆっくり考える習慣がある人間は、過去に難問を解いた経験も蓄積されており、自分の力量で解けそうな問題の見積もりも決して動物的な仕方ではしないものである。
難しい問題がポンと降りかかった時にどう反応するべきか?
読書せず、思索せず、ぼーっと生きている人がどう反応するのか?
普段から机に座り、紙とペンで物書きする習慣のある人ならどう言う反応をするか?
を述べた。
つづく。