Published: 2025年10月31日
ちょっと時間つぶしをせねばならず、パッセンジャーを観てきた。
パッセンジャー。まことに模範的な恋愛マニュアル映画であった。メルマガで紹介しよう。 pic.twitter.com/yT3PJSvqxb
— サウザー (@Fist_of_Phoenix) 2017年3月25日
全然期待していなかった訳だが、意外や意外、これ、恋愛工学的にとっても良い教材であった。
一つの完成された恋愛マニュアル映画だと思った。タイタニックみたいな。
簡単にあらすじを述べる。
住みにくくなった地球から移住先の新しい惑星へ、120年間の宇宙船の旅の話である。
5000人の乗客は長旅の途中、冬眠装置で眠っている。目が覚めたら120年後、と言う寸法である。
だが、乗客の一人のジムは、不運なことに、機器の故障で一人だけ冬眠から目覚めてしまう。
出発から30年後、つまり目的地への到着予定は90年後だ。一度解除された冬眠状態にはもう戻れない。新天地を見ることなく寿命が尽きて死ぬ運命である。
ジムは無機質な宇宙船の中で絶望的な孤独生活を送る。
寂しさで精神が壊れる寸前のところで、彼は、とある大罪を思いつく。
客室で冬眠中の美女(寝顔に一目惚れした)、オーロラの冬眠を解除しようと言う計画だ。
葛藤の末、ジムはオーロラを起こしてしまう。
ジムの身勝手よって、彼女も一度冬眠から目覚めてしまうこととなり、もう再び冬眠することはできず、移住先の惑星にたどり着く前に寿命が尽きて死ぬ運命が確定した訳だ。
僕がこの映画の何に感銘を受けたかと言うと、主人公のジムは、技術屋でオタクのはずなのに、恋愛マニュアル的に完璧に正しい行動を、常に選び取ることが出来る、と言うことである。
1年間の絶望的孤独があって、許されない罪を犯してまで冬眠から目覚めさせた美女オーロラと、待ちに待ったご対面のシーンは必見である。
何の訓練もしていない男だと、必ず非モテくさい行動を取ってしまうシチュエーション。
だが、ジムは、死ぬほどお待ちかねだったパツキン美女を前にして、慌てず、焦らず、実に適切な振る舞いをする。
ナンパ師のようにネグる訳でもなく、非モテのように阿諛追従(あゆついしょう)する訳でもなく、恋愛マニュアルとしてこれ以上なく正解な振る舞いを、実に精密にトレースしてゆく。
僕は感嘆の念を禁じ得なかった。
何がどう適切かについては映画の本編に譲るとする。
要するに、これは中道をゆく恋愛マニュアル映画だ。
アポってセックス、の掟までもが踏襲されていて、素晴らしい模範演技であったと思った。
ネタバレになるので詳細には言及しないが、劇の中盤、二人の関係をぶち壊すカタストロフィックイベントが勃発する。
思うにこれは、浮気がバレた時のメタファーであろう。
その際のジムの振る舞いも、実に見事と言うべきである。
減点法でどうしようもない選択肢の中から、これ以上無い最善の言動を、しっかりと選び取る。
映画としての世界観だとか、オチがどうだとか、そう言うことを述べるつもりは一切無い。
きっとこれは、女性が、男にはこう接して欲しい、を忠実になぞった映画なのだ。
新規と観に行く事を推奨する。
をはり。