Published: 2025年11月26日
今は亡きおじいさんの空き家を再生して、再び時は流れた。
くだらない勤め人生活を送っていたある日、我が父上が、僕の勤め人の赴任地にぶらりと旅にやってくるとの事である。
近くで父方の親類の法事があって、その中継地として僕の非モテ屋敷で一泊して行くと言う。
珍しい事だ。何ごとであろう?
そう思って出迎えると、
「実は、この土地に物件持ってるんだが、しばらく空室でどうしたもんかと思って居る」
との事であった。あんた色々物件持ってるの知ってるけど、どんだけ持ってんの?と。
聞いてみると、家からわずか車で15分である。マンションの区分所有。
マジで早く言えよ、殺すぞ、と思った。片道500kmのおじいさんの家より全然近いやんけ。
言われてみればその昔、父も転勤のためこの土地で勤め人をしていたのである。その時に仕込んだのであれば、かなりの年季の物件であると推測される。
「とりあえず、現場見に行こうぜ」
それからのことは寿司でも食いながら考えよう、と言う事になった。
やはりと言うべきか、ここに来てなお父上は二の足を踏んでいた。なぜだろう?
長年の父子の付き合いだから何となく分かるが、オヤジ、上手く行ってないものは見たくないんである。相場やっても含み益が乗ってる時は上機嫌で情報を取るくせに、下がったら無関心になって放置する人と一緒。
勤め人あるあるだな。
現実を見るのは辛いから、そんなものは無かった事にしてやり過ごす。「別に金に困ってないから」とか言って合理化して問題を先送りにする。
基本は息子である僕に投げるつもりだったらしく、まさか現調に駆り出されるとは思っても見なかったようである。
知力も体力も僕よりはるかに優れ、勤め人としての立身は僕など並ぶべくもないこの父に欠けているのは何か。
リアリズムの精神。
現実を歪めてしまう悪い癖である。
だが、勤め人で出世するためには現実がナマのまま見えるのは非常に良くなかったりもするので、色々だろうとは思う。
①現地調査
物件住所を調べ、現地に車を走らせる。
うげー嘘でしょ?と言うぐらい、道が細く、交通不便な山の上にその物件はあった。いちおう、人口密集地のようではある。
バブル期には市街地に物理上近いと言うだけで(実質的には交通不便だからやや遠い)、こう言う無理な土地造成をしたと聞く。
「こんな道だったっけな?こんな物件だったっけな?」
道中、父は首をかしげる事の連続である。
さては?と思った。
(こいつ、まさか、物件見ずに買ってやがったなーー!)
バブル期あるある。同僚の何某も買ったからとか言って、営業マンのおべっかトークに乗って、それで銀行融資もジャブジャブついて、何も考えずに簡単に買えてしまったってところなんだろうな。
さて、問題の物件に着いた。
そこそこの美人。まあ僕がいつも買うようなボロ物件に比べればかなりマシなマンションであった。
②リフォームの状態を見る。
リフォームの状態は良い。普通に良好。
オヤジ、これは相当リフォーム屋にぼったくられたんだろうなあ。
③募集家賃の確認。
「募集家賃は?」
と聞くと、知らないと言う。
いやいや、オヤジよ、あんた大家なんだから自分の物件の募集家賃知らねーってあり得ねえよ、と言う話になり、管理会社に電話してもらった。
月55,000円だと言う。
ふーん、とか思った。その時は。
④入居者募集してるのか確認。
「その管理会社、本当に募集してんのかな?」
と言う事で、手元のスマホでスーモとかアットホームとかの、賃貸仲介ポータルを見てみるが一向に見つからない。
まさか募集してねえぞ。これって背信行為じゃねえか。
即座にその管理会社とやらに今度は僕が電話して、軽く詰めてみる。
「やいやい、今ネット見たけど何で募集しとらんのけ?」
と。
「いやあそれはですね」
と、得たり、と言う感じでリズムよく反論を始める管理担当。
つづく。
追記:その2へ